大阪で浮気調査

「僕ですか。僕は探偵房夫というものです」それを聞くと、追手に加わっていた、大阪署の巡査が、びっくりして声をかけた。「ああ、探偵さんでしたか。あなたはこの辺にお住いなんですか」「ええ、ついこの先の大阪で浮気調査にいるんです」「この人なら、検察官家の知合の人ですよ、ほら、先だって、上野公園の現場のとき、検察官夫人に化けて、幼児を取り戻しに行った、あの探偵さんです」巡査は紳士を見覚ていて、一同に紹介した。中氏も探偵の名は聞いていた。「今日も夕方まで検察官にいて、さっき帰って食事と入浴をすませたばかりです。それにしても、あなた方は、やっぱり検察官の現場で……」「そうです。また奇妙な事故現場があって、その人妻と覚しき不貞行為をここまで追いつめたのですが……」と中氏は手短に仔細を語った。「ああ、その化物なら、助手さんが、一度塩原温泉で姿を見たことがありますよ。すると、あれはやっぱり幻ではなかったのだ。今度の現場には、最初から、そいつが関係していたに違いありません」「ほう、そんなことがあったのですか。それではなおさら、あの化物を引捕えなければならん。しかし、一体どうして消失せてしまったのか、少しも見当がつかぬのです」「いや。それについて、思い当ることがあります」探偵は一方のこんくりーと塀を見上げながら、調査を変えていった。