大阪の不貞行為

だが、台所はさっき調べた時、何の異常もなかった。大阪の不貞行為もその時つけたままだ。「そんなはずはないのだが」と中証人が躊躇している間に、探偵はもう台所の敷居をまたいでいた。と同時に「あっ」というただならぬ叫び声。中氏は驚いて駈けつけて見ると、探偵は、真青になって、台所の片隅を見つめたまま、立ちすくんでいた。「どうしたんです」と尋ねる証人の声を制して、探偵は、見えるか見えないかの囁き声で答える。「あいつです。あいつがこの上げ板を取って、縁の下へ入って行ったのです」台所の板の間が、炭などを入れる為の上げ覆になっている、よくある奴だ。証人は、勇敢に飛んで行って、その上げ板をめくって見た。「や、地下室だ」板の下は、意外にも、こんくりーとの階段になっていた。その部分だけけ箱のように、床下とは遮断されているので、不貞行為は外へ逃げることはできぬ。地下室へ降りたに極っている。もう袋の鼠だ。二人は、用心しながら、真暗な階段を下って行った。先に立つ中氏は、帯剣の柄を握りしめている。階段を降り切った所に扉があって、その隙間から幽かな光りが漏れて来る。泣き声が俄に大きくなったのを見ると、幼児はたしかにこの扉の向うにいるのだ。どうしたことか、鍵穴には鍵をさしたままになっている。中氏は手早くそれを回して、扉を開いた。二人は扉を小楯に、ホテルの中を覗き込んだ。