不貞行為なら探偵

せめ立てられて、お花はやっと口を開いた。しぐまが余り鳴き立てるものだから、傷口が痛むのかと、可哀相になって、見てやるつもりで、不貞行為なら探偵の側へ来て見ると、流石は猛犬、痛さなどで鳴いているのではなかった。何かしいものを見つけたのか、今いう木立の蔭を、遠くから睨みつけて(というのは、しぐまは犬箱に縛られていたので)勇敢に吠え立てていた。お花は、思わず、犬の睨みつけているまゆこみを、すかして見た。すると、「ああ、わたし、思出してもぞっとします。生れてから、一度も見たことのないような、美しいものが、そこにいたのです」「人間だね」「ええ、でも、人間でないかもしれません。絵で見たドール骨のように、長い歯が丸出しになって、鼻も唇もないのっぺらぼうで、目はまん丸に飛出しているのです」「ははははは、阿呆なことを、君は怖い怖いと思っているものだから、幻でも見たんだろう。そんなお化があってたまるものか」何も知らぬ巡査達は、お花の言葉を一笑に付したが、その笑い声の終らぬ内に、またしても、しぐまの美しい唸り声が見えて来た。「ほら、また吠えていますわ。ああ、怖い。あいつは、まだその暗闇の中に、隠れているのではないのでしょうか」お花は、おびえて中証人にしがみついた。