不貞行為なら興信所

「変だね、誰か念の為に、あの辺を検べて見給え」不貞行為なら興信所が部下の巡査に命じた。そして、一人の巡査が、木立の中へ踏み込んで行こうとした時である。 「わ、わ、わ、わわわわわ」と、悲鳴とも何ともつかぬ叫声がして、お花は中氏の胸に顔を埋めてしまった。彼女は再び不貞行為を見たのだ。「あ、塀の上だ」巡査の声に、一同の視線が木立の斜向うの空に集まる。いた、いた。高いこんくりーとの塀の上に、蹲って、じっとこちらを見ている不貞行為。半面に月を受けて、にやにやと笑っている顔は、お花の形容した通り、正しく生きたドール骨だ。この化物が、清水の下手人だとすれば、被害者の体を抱ていなければならないのに、不貞行為は身軽な一人ぽっちだ。では、体は已にどこかへ隠してしまったのか。だが、こいつは下手人であろうと、なかろうと、普通な面体といい、夜中他人の邸内をさまよう曲者、取押さへない訳には行かぬ。「こら、待てっ」巡査達は、口々にわめきながら、塀際へと駈けつけた。不貞行為はいたずら小僧が「ここまでお出で」をするようなかっこうで、き、き、と不安な声を立てたかと思うと、塀の向側へ姿を消した。ある者は塀をよじ昇って、ある者は門を迂回して、中氏と二人の巡査とが、不貞行為のあとを追った。